石川真介『越前の女』光文社文庫

ネタバレ注意。
副題に「東尋坊殺人事件」。すっごく魅力的なタイトルですねー。
で、心の底からどうでもいいんだけど、一応引用しとくね。

「でもね、最近の新本格と称する作品には、とても困るわ。だって、図解が多くて口では説明しづらいし、登場人物がやたら多い割には、性格分けがきちんとされていないし、頭のいい母でさえも、混乱してしまうのよ……おや、これらの人たちは、結局のところ殺されるために集まったのかい、とか、ひとりでも来ない人がいたら連続殺人はどうなったのかい、などと聞かれても、応えようがないし。やっぱり本格物でも、文芸的なストーリー性のあるものがいいわねえ」
(146p)

笑わせんのもいい加減にしろよw
というわけで、「福井ふるさと大使」の面目躍如たる、福井の名所総登場wのトラベル・ミステリですが。
この本読む前に東尋坊行っといてよかったってぐらいで、書かれれば書かれるほどどうでもよくなっていく「観光名所」と、どうしようもなく垢抜けない、独善的な中年男性の感性で描かれる「女の三代記」はともかくとして、この小説が後半なだれ込んでいく展開の不条理は、俺の理解を完全に超えていた。虐げられた「越前の民」の、信長の末裔(被害者)に対する復讐? それが動機? は、清涼院ですか? そんなんで「文芸的なストーリー」だの「リアリティ」だの言いやがるの? 口ポカーンだわ。
誤解されたくないのは、別に引いたような「新本格」批判に拒否反応が出ているわけではなくて、それを作家の名に値しない筆力の輩が垂れ流しているのがたまらなく醜いと思うだけです。
そしてこの人の本の解説では、絶対に学閥の交友関係に触れないといけないんでしょうか? 作者の指示なんでしょうか? いろんな場面で口ポカーンでした。
評価はC−。

越前の女―東尋坊殺人事件 (光文社文庫)

越前の女―東尋坊殺人事件 (光文社文庫)