ネタバレ注意。
ホントは五分冊それぞれにタイトルがあるが、面倒なのでまとめて。
文庫版、いろいろと加筆修正がされているらしい。9.11後の世界情勢が言及されたり、それらしい部分は仄見え、そしてやっぱりそのほとんどがうすら寒いのだが。
時間も場所も離れ、状況も違う。だが、空爆を受けて人が死んだ事実だけで考えてゆけば、ニューヨークもアフガニスタンも、そしてこの国も、またかつての東アジア諸国も、時間を超えて結ばれるように思い……さらにはもっと多くの地域が、多数の人が亡くなったという事実において結ばれる気がする。
(「遭難者の夢」276p)
…なんて風に。こんなどうでもいい内容を「全面改稿」に託したのであれば本当にくだらないと思うし*1、こういうこと書くとすぐ他の登場人物にその偽善性を指摘させてみたりと、なんか煮え切らない。その中で、浚介や游子といった主人公キャラも、造形がブレていく。そう、作中のそれは「成長」ではなく「ブレ」としか捉えられない変化であり、この人たちの「顔」が、物語の中で全然見えてこない。この二人が初めて結ばれるシーンの「言い訳めかしさ」には失笑してしまった。どうでもいいわマジでw
…と、この程度の罵詈雑言は想定内で読んでいましたが、作品として「家族神話」というものに対するアンチテーゼという姿勢は一貫していてそれは好ましいし、これだけの量、丁寧にストーリーを積み上げればそれなりに説得力もあり、そうした点では「力」のある小説だと思う。装丁含めて生理的にダメな部分はしょうがない。
評価はC+。
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*1:実際は殺害方法とかいろいろヌルくなってるらしい。