川田武『乱歩邸土蔵伝奇』光文社文庫

ネタバレ注意。
寡聞にして著者の方の名前を存じ上げなかったのですが、略歴見てみると…うーん、ややテンション落ちた。
で、「乱歩史」に対する独自の新解釈、という目の付けどころにはワクワクしたんだけど、読んでみればそれはミステリ仕立てではなく、完全なトンデモSFだった。この作品によれば、乱歩は(恣意的に)タイムスリップして坂本竜馬と交流していて、それをモデルに明智小五郎を造形し、なんで明智かっつったら竜馬は明智光秀の末裔で、さらにはその場になぜか本能寺の炎の中から信長もタイムスリップしてきて、末裔である竜馬を勘違いしてたたっ斬る、これによって本能寺からの信長の死体消失と、竜馬暗殺の下手人という日本史上の謎、さらに乱歩の休筆と作風変化という文学史上の謎が解き明かされました! …という。
俺まったく乱歩に思い入れないし、期待してなかったから流せるけど、怒る人は怒ると思うよ。別にバカSFとして読めばいいだけの話だし、プロット以外はクセのない小説だし。ただ、日本史のスターを節操無く出しただけじゃあ売れない、という哀しい見本ではある。
評価はC。

乱歩邸土蔵伝奇 (光文社文庫)

乱歩邸土蔵伝奇 (光文社文庫)