米澤穂信『遠まわりする雛』角川書店

ネタバレ注意。
タイトルに、「すわ坂木司か」と身構えたけど、雛行列が工事中の橋を迂回する話だったw わざとだろーコレもー。
古典部の一年を切り取った短編集。新入生時期あり、温泉夏合宿あり、初詣ありバレンタインありで、多彩なシチュエーションでまず読ませる。「日常の謎」短編としてのロジックも工夫されているが、キャラクタ個々の自意識と密接に関連しすぎている印象もあり、求めるところによってやや評価は分かれるだろう。俺は正直「またかよ…」と思った。
ただそうした、何度も言ってる里志の自己韜晦を中心としたラノベ臭のなかにも、作者の周到は透けて見える。奉太郎とえるの関係の進展の予兆もそうだが、なにより「心あたりのある者は」のあまりにも無造作にあっけらかんとした伏線。信頼のニヤニヤ笑いが、この作家を読む時の常態になりつつあるな。
評価はB−。

遠まわりする雛

遠まわりする雛