五條瑛『熱氷』講談社文庫

ネタバレ一応注意。
「流氷ハンター」という主人公設定は面白いと思ったし、実際冒頭の「アイスハント」の情景にはひきこまれたのだけど、結局すぐ日本に渡って関係なくなっちゃって。氷の海の透明感と厳粛とは正反対の、日本でのうだうだとした冒険小説展開が矮小なものに思われて仕方なかった。結局ラストでコンテナ崩すとこだけだもん。「氷」活きたの。
物語の核になる、主要登場人物相互の感情や想いや企みも、いかにもこの作家らしくベッタリといやらしい質感のものだし、半分ファンサービスのギャグであったとしても、開き直ってホモっ気を出すのはやめていただきたい。唯一「テロリストの系譜」という作中テキストは巧かったが、別にそれが主眼の小説ではないし、まあ正直ベタ。
評価はC。

熱氷 (講談社文庫)

熱氷 (講談社文庫)