東京60WATTS 『60』

『東京』の次は『60』だって。
今回のアルバムは歌モノに特化していて、聴きやすく仕上がってます。「たまにはこんなラブ・ソング」とか、スキマスイッチのアフロの人がプロデュースしてたり。まあ俺は変にホーンセクションとか入れないで、ピアノロックに特化した方が断然カッコいいと思うけどね。
しかし今回ピアノロックというよりは、ピアノフォーク、さらにはそれに「歌謡」とつけてしまってもいいような、湿度を感じさせる曲が多いのも事実。もっとカラリとしていてもいいのではと思ったし、それにその割には土着性をあまり感じさせないのも不満。原付で走る目白通りとか、池袋のビルの向こうの夕日とか、リアルな情景が彼らの楽曲の豊かな叙情性を支えていたと思うので。
だけど、

もう少しスマートに なんとなく分かるくらいに
それでいて心に突き刺さるような言葉
並べたら売れるかな 売れたら君も喜ぶかな
そんなのあんまり得意じゃないけど
(「たまにはこんなラブ・ソング」)

とか、大川毅オリジナル・キャラクタの作家性は発揮されています。誰も彼もが野田洋次郎にはなれないのだから、ずっと大事に鳴らし続けて欲しい愛すべき作家性。
ベスト曲はイントロの流麗を極めたピアノの音色、そしてソファというモチーフの、心情描写と言葉遊びの両面への効果的な配置に唸らされる「ソラミミソファ」。あと「朝焼けハイウェイ」も好きです。

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