ネタバレ注意。
これは素晴らしい。
デビュー作でも大きな特色であった非常に丹念なキャラクタ描写は、群像劇の主体が大学生に移ってもそのまま。上下巻1000ページを読まされたのはほとんどがそれ。特に月子という主人公格を中心として、真紀や紫乃や萩野先輩といった女性たちの関係性が巧い。*1サイコな殺人事件はむしろどうでもよくて(本筋なのに)、こういうので大学生活を懐かしがらせてくれ、とか呑気に思ってたんです…
…見事にやられました。
前作からの経緯、それにペンネームにも垣間見れる*2綾辻フリークぶりから当然警戒はしていたんだけど、前作を遥かに凌駕して鮮烈に。作家が紙幅を尽くして丹念に造型した登場人物、その一人一人への愛着と感情移入が、なんとも爽快な切れ味でひっくり返される。メインの事件の位相にこそ直接的な影響を及ぼすわけではないが、そのカタルシスは言うまでもなく、良質な「本格」のそれだ。綾辻直系の湿度とサプライズ、あるいは恩田陸的なノーブルなクオリティ。俺が気に入らないわけはなかった。
んで、ひっくり返された後の長い長い「語り」はやはりどうでもよくなってしまい(真相なのに)、テンションもガタ落ち、これは減点かな、惜しかったなB+止まりか…とか思ってたんだけど…
…泣きました。
まさかああも粋なラストシーンを用意してるとはね。ベタっちゃベタなんだけど、俺は好きです。素敵だと思いました。…まあ今後の期待も込めて、減点はしとくけどね。
評価はA−。
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