樋口有介『風少女』創元推理文庫

ネタバレ一応注意。
青春ミステリ。舞台は群馬県前橋市。行ったことあるよ。主人公が聴き取りに行く隣の村にも泊まったよ。次はカッパピアに行きたいな。
…で。良質な青春ミステリだと思います。と云うか、ミステリという小説形式自体が、「青春」を描くのに適している、という見本のような作品。トリックなんて別に大したことないけど、父親の死に際して帰省する、するとそこでは中学時代好きだった同級生が自殺してる、あの娘は自殺なんて「似合わない」娘だった、じゃあ昔のツレに話聴きにいこうか…という、ミステリとして実に自然な流れのなかで、効果的に「青春」が掘り出されていくのですよね。個人的には中学生活に苦い自己嫌悪しかないけど、こういう物語のなかで描かれるノスタルジィの対象としてはやはり非常に魅力的なものだと思います。地方都市における中学生活。
まあ単に装置設定だけで面白くなるもんじゃないので。青春ミステリなんてものは。センチメントの表現や、だいぶクールで少しファニィなキャラクタの造型、地方都市ならではの閉塞感、そういったものをおおげさにならずに描く作者の筆力も確かなもの。解説の法月がシンパシィを表明するのも頷ける書きぶりですな。じゃあなんで『密閉教室』はあんだけやっちゃったんだって話はあるけど、あれもあれで絶妙だしね。
作品の評価はB−。

風少女 (創元推理文庫)

風少女 (創元推理文庫)