島田荘司『火刑都市』講談社文庫

ネタバレ注意。

東京に連続するビル放火事件と、それに絡む殺人事件に中村吉造刑事が挑む、都市ミステリ長編。

取って付けたような密室機械トリックは何の要請か分からなかったし、都市論についても興味を惹かれなかったので、個人的には地方から東京に出て暮らす若者たちの孤独を描いた、青春ミステリとしての造作が印象に残った。特にヒロイン、渡辺由紀子は一読忘れ難い。

「私、東京のことなんか、なんにも知らなかったから」
(376p)

地方出身者として身につまされるものもあるけど、特に彼女が独力で打開しなければならなかった苦境、今でも時々似たようなニュースを見るけど、それはどんなに絶望的な孤独の風景であろうかと、暗澹たる気持ちになってしまう。

ホント男なんて、ロクなことしやがらねえのさ。

評価はC+。

火刑都市 (講談社文庫)

火刑都市 (講談社文庫)