『福田村事件』

@サロンシネマ

関東大震災時、千葉の農村で薬の行商団が「不逞鮮人」として虐殺された史実を描く、森達也初の劇映画監督作。

虐殺シーンに至る描写は凄絶を極め、心臓を鷲掴みにされる思いがしました。画にも俳優陣の芝居にも、使命感と呼ぶべきものかどうか、気合入りまくりの凄みがあります。

永山瑛太は圧倒的だったし、東出昌大も素晴らしかった。水道橋博士も本当によくやったと思う…。唯一静子という人物だけは、物語的にも演出的にも、未消化のように感じてしまって…このあたり監督はどう考えているのか興味深いところ。コムアイよかったし、咲江に託されるものがもっと大きくてよかったように思ったけれど。周縁部では亀戸事件の描き方とか、新聞記者の役割とかも盛り込みすぎだったかな…特に後者については、正力松太郎とかガンガン出して追及してよかったんちゃうかな、でもそれじゃ何時間あっても足りんか。

愚昧さによって、こんな地獄としか呼べない負の歴史を刻んだことは国民として以前に人間として決して忘れるべきでないことであるはずなのに、歴史修正主義者とそれに阿諛追従する権力層の連中は、ここで描かれる愚かで罪深い人々より醜悪であると思います。しかしまあ、土曜の朝から映画館満員で、捨てたもんでもないかとも思いました。