連城三紀彦『密やかな喪服』講談社文庫

ネタバレ注意。

短編集。

劈頭「白い花」はいかにも連城らしい隠微なミステリだったが、「消えた新幹線」なんてトリッキィな作品が続いて油断ならんと思っていたら、やはり次の「代役」が輪をかけてトリッキィな怪作だった。「ベイ・シティに死す」はタイトルからしてアーバンなロマンスものかと思わせてなぜかリリカルなヤクザもの、さびれた港町の叙情がもの寂しい佳作だったし、「密やかな喪服」もありがちなサスペンスの顔をして
、稀有な恐ろしさに震えるサイコパスものに変貌していく。「ひらかれた闇」という珍しいヤンキー青春群像をクッションに、ラストの「黒髪」がようやくイメージぴったりの官能・耽美のオトナな恋愛ミステリ。

安定の手腕と、それを逸脱する意外性の発揮された、さすがの作品集でした。

評価はB。