連城三紀彦『処刑までの十章』光文社文庫

ネタバレ注意。

あるサラリーマンの失踪を、妻と弟が捜索するサスペンス・ミステリ。

「五時七十一分」とかのツカミの謎、ベースにある陰った雰囲気なんかはさすがの手練れぶり、六百頁近い長編を一気に読ませてくれる。一方で終盤の怒涛の真相語りは置いてけぼり食わされる感があるし、それに伴って端役連がワラワラと表舞台に湧いてくるのも、あまり愉快な眺めではなかった。

『女王』『わずか一しずくの血』もそうだったけど、晩年の連城は、気宇壮大な「怪作」を濫発してたような印象がする。こういうんじゃないんだよな…もう少しなんとかならんかったかな…。

評価はC。