平野啓一郎『ある男』文春文庫

ネタバレ注意。

事故死した夫の経歴が全くの他人のものだった、という妻からの「謎」を、弁護士の主人公が解き明かす長編。

吸引力のある謎と、鋭利な批評性による、上質な社会派ミステリ。かつ主人公たちのこまやかな心理描写は、文学としての豊かな読書体験をもたらしてくれる。胸に響く主題と、染み入る叙情性。さすがのいい小説でした。

めちゃくちゃノーブルな島荘、なんて思ってたのは、いろいろ不本意だろうから秘密だ!

評価はB+。