D.アイカー/安原和見(訳)『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』河出書房新社

ネタバレ注意。
副題通りのノンフィクション。
事件に至るパーティの行程の再現、発覚からその後の捜査、現代の著者による探求、と三つのパートで進行、事件の謎の抜群の吸引力もあって、息もつかせぬ面白さ。イッキ読みで読んでしまった。
wikiとかで掘ってる限りでは、冷戦下ロシアという舞台立て、当然人物名も覚えにくい、残留放射線とかゴシップな要素に事欠かず、都市伝説的陰謀論に靡きたくなるけど、この本では当時のパーティの…アウトドア派の元気な学生たちの…写真もフルに活用して、墓碑銘でなく人間としての「彼ら」が活写されていて、また著者の探求パートでは今も事件を大切に思う人たちの姿や、取材者としての自身の葛藤が描かれて真摯だし、そうしたすべてが結ばれて提出される事件の「真相」も、それが並列的な仮説の一つとはいえ充分な説得力を感じさせる。
読む前、「死の山」じゃなくて『死に山』ってキッチュに禍々しくてセンスいいな、と思っていたけど、そうした下世話な興味を超えて、誠実で質の高いノンフィクションでした。
評価はB+。

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相