深水黎一郎『エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ』講談社文庫

ネタバレ注意。

エコール・ド・パリのコレクションで有名な画廊主の密室での死を描く、「芸術探偵」シリーズ第一長編。

うん、素晴らしかったと思います。「まずそれだけで読み応えのあるものにしなければならない」という宣言の通り、作中のエコール・ド・パリ論の部分が面白い。それを追いかけたくて、どんどん頁を繰ってしまう。

その分、メインの事件がチープかな…なんて思っていたら、真相が明かされるに至って、それが「呪われた芸術家たち」の肖像と響き合って、衝撃と深い余韻をもたらしてくれる。感銘しました。

絶賛の法月解説にも触れられてるように、パスキン論の省略など、平明さの中にも深読みできるポイントがあって奥深い。スマホ片手に図像検索しながら読んだよ…そうしたくなる小説だわ。

大癋見警部で単著出てるの知ってるから、実はこっちが探偵役で…なんて瞬一郎氏に探偵役ヅラした犯人たる疑いの目を向けていました。不明を恥じつつ、次は無心で読みます。

評価はB+。