松本麗華『止まった時計』講談社+α文庫

ネタバレ注意。
麻原彰晃の三女・アーチャリーとして知られる著者の、生い立ちから執筆時点でのオウム裁判までを振り返る手記。
オウムについて勉強したいと思っても、今さら手に入る本って少ないよね…ってことで貴重な本だし、コレを顔出しで世に出したことは意義深いことだと。いろいろと穿って見ることは可能だし、必要なことでもあるかもしれないけど、とりあえずはそう思う。読む方が相対化して見ていればいいことだし…著者の父親像は偶像的に過ぎるし、自己像も非常にナイーヴで、そもそも捨象されている部分も多く、事件と人生をちゃんと相対化しているとは言えない内容ではあるから。
しかしそうした機会を著者が奪われている(あるいは永遠に奪われてしまった)現実もまた問われなければいけないことで。せめて著者の教育の権利が護られたことはよかった。向学心が芽生え、中卒認定試験の合格、通信制高校への入学、大学合格と、挫折を経ながら進んでいく様には、ビルドゥングス・ロマン的な感動があります。敬愛する弁護士に送ったという詩には若干ウルっときさえしました。
彼女は『ルイズ』を読んだことがあるかな…。
記録のみ。