中島らも『アマニタ・パンセリナ』集英社文庫

ネタバレ注意。
種々のドラッグに関するエッセィ集。
こないだの『ビジネス・ナンセンス事典』とは逆に、ラリってて無軌道な内容だけど、その分無闇矢鱈に面白いわ。ドラッグに関する薀蓄や体験記の中に、死んでしまった友人たち、過ぎ去ってしまった時間への哀惜と寂寥が滲む。これぞ中島らもというべき、透徹として愛すべきエッセィ集。

 僕は馬鹿だが、かつて一瞬でも悲惨であったことはない。"十年ブロン"や"二十年一升酒"をやってきた。これは「因」だ。「果」としていまこの少しつらい自分がある。しかしこの自分もまた「因」だ。次の「果」がくる。
 そうして、因縁にからめとられ、少しずつ姿かたちを変えながら、我々は時間の河を渡っていくのだ。死に向かってではない。生に向かってだ。
(95-96p)

評価はB+。

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)

アマニタ・パンセリナ (集英社文庫)