江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso』角川文庫

ネタバレ注意。
ミラノでアメリカ人の恋人と暮らす主人公・アオイの生活と、過去のある「約束」の行方を描く長編恋愛小説。
スイーツOLの理想の生活…などと揶揄したくなる、コマーシャルな印象もある作品だけど、一方でなんか、巧いな、と感じさせる小説ではあるんだよな。マーヴとの生活に充足しつつも、すぐにそれを放棄してしまえる感覚とか、順生への思慕は全面に出ずに慎ましやかなのに、いざとなるとそれに傾斜していく情熱のありようとか、描かれる思考や感情は決して大人しい当たり前のものではないのに、それはすんなりと納得できるものとして在る。
だからこそちょっと、再会以降の流れはあまりに刹那的にピークアウトしすぎなんじゃないかと思って不満ではあったのだけど。しかしそれは恋人たちの物語にメデタシメデタシを望む、揶揄したくなるなんて言いつつ結局俺が一番のスイーツだったってだけの話なのかもしれず。
評価はC+。

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)