都筑道夫『都筑道夫コレクション 《怪談篇》 血のスープ』光文社文庫

ネタバレ一応注意。
表題作はヴァンパイアものの長編で、他に雪崩連太郎ものを含むホラー短編を収録。
表題作は、なんだか散漫な印象だった。ホノルルでのいきずりの同性愛性交渉から始まるエロ要素と、挿入されるテレパスを表現して実験的なテキスト、小説を構成する種々の要素がうまく絡んでいない感じがしたし、ホラーとしては恐怖のピークなんかもなくて、グダグダのまま終わったなーという感じ。
他の短編も、アイデア重視で、文章の雰囲気や世界観に乏しく、個人的にホラーとして評価できるものはあまりなかった。そうした志向が、各編の最後にあとがきを付すという、正直興醒めにしかならない構成に反映しているようにも。
そんな中で「はだか川心中」は、卓抜なアイデアと、奇妙な味も演出できていて、出色の一編と思いました。
評価はC。

血のスープ <怪談篇> (光文社文庫)

血のスープ <怪談篇> (光文社文庫)