岩井志麻子『偽偽満州』集英社文庫

ネタバレ注意。
岡山の遊郭から、ピストル強盗の男に惚れて共に逃げ出した主人公・稲子の、昭和初期激動の大陸を股に掛けた、逃避行とやがて追跡行。
満州」ってのは個人的に興味深い舞台立てだったので、もっとじっくり詳細に描いてほしかったけど、解説の花村萬月が評する通り《紗幕のかかった不明瞭さをあえて纏》ったような印象で、舞台としての満州はどんどん夢幻的・象徴的になっていき、その中に溶け込んでいくようなイメージのまま結末に至ってしまう。花村の言うようにそれが技巧であり凄味なのだとしても、俺は上がったテンションの行き場がなくて、竜頭蛇尾…とまではいかなくても手応えの無さを感じてしまう終盤だった。
まあシマコに歴史大河なんて求めてもしょうがなくて、この作品は猥雑で勢いのある、愉しいものであることに違いはないけれど。
評価はC+。

偽偽満州 (集英社文庫)

偽偽満州 (集英社文庫)