『グッバイ、レーニン!』

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ドイツ統一前後の東ベルリン、昏睡状態にあって体制崩壊の瞬間を見ていない、社会主義信奉者であった母親にショックを与えないため、あの手この手で「ドイツ民主共和国」の(家庭内)延命を企てる青年を主人公にしたホーム・ドラマ。
秀逸なアイデアと、テンポのいい演出で飽きさせない、良質なコメディ映画です。社会主義体制をよく映し出したくすんだ画面構成と、相反する資本主義消費社会の描写のギャップ、また美しくも物悲しい音楽によって、芸術性においても満足させてくれました。
ドラマとしてはちょっとアッサリ終わってしまったような印象があり、父親との葛藤も消化不良のような印象もあったけど、終盤でアレックスが描き出したドイツの理想像は、現代社会にクリティカルなメッセージになってもいて、単にドイツ統一という歴史的な特異点を描いたものでない、見事な普遍性を作品に与えていたと思います。まあ同時に、秘密警察周りとか、東ドイツディストピア性はもっとしつこく観たかった…てのは俺の趣味だけど。
主演のダニエル・ブリュールは文句なしの好演、ヒロインのチュルパン・ハマートヴァも印象的でした。これ観た後だったら、『イングロリアス・バスターズ』もひと味違った感慨があっただろうな。