立原道造『立原道造詩集』ハルキ文庫

ネタバレ注意。
肺を病んで夭逝した詩人、東京帝大出の建築家としての顔もあり、写真で見てもズバリの白皙ぶり、と先入観ばかりの膨らむ名前ですが、あにはからんやのイメージ通り、繊細でロマンティックでセンチメンタルな、美しい詩が並んでいます。

私らは別れるであらう 知ることもなしに
知られることもなく あの出会った
雲のやうに 私らは忘れるであらう
水脈のやうに
(「またある夜に」、14p)

ちょっとテイストが統一されすぎているような気はしていたけど、時系列で読んでいくうちに、憧憬に多くを占められていた浪漫的な世界に、徐々に虚無感のようなものが忍び込んでくる様が感じられて、それもまた先入観の故かもしれないけれど、なんだかせつないような心持ちがした。

――それはそのまま 思ひ出だった
僕は手帖をよみかへす またあたらしく忘れるために
(「旅装」、149p)

評価はB−。

立原道造詩集 (ハルキ文庫)

立原道造詩集 (ハルキ文庫)