ネタバレ注意。
肺を病んで夭逝した詩人、東京帝大出の建築家としての顔もあり、写真で見てもズバリの白皙ぶり、と先入観ばかりの膨らむ名前ですが、あにはからんやのイメージ通り、繊細でロマンティックでセンチメンタルな、美しい詩が並んでいます。
私らは別れるであらう 知ることもなしに
知られることもなく あの出会った
雲のやうに 私らは忘れるであらう
水脈のやうに
(「またある夜に」、14p)
ちょっとテイストが統一されすぎているような気はしていたけど、時系列で読んでいくうちに、憧憬に多くを占められていた浪漫的な世界に、徐々に虚無感のようなものが忍び込んでくる様が感じられて、それもまた先入観の故かもしれないけれど、なんだかせつないような心持ちがした。
――それはそのまま 思ひ出だった
僕は手帖をよみかへす またあたらしく忘れるために
(「旅装」、149p)
評価はB−。
- 作者: 立原道造
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 文庫
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