樋口有介『枯葉色グッドバイ』文春文庫

ネタバレ注意。
樋口ライト・ハードボイルド、今回はキャリア志向の若い女性刑事と、刑事ドロップアウトの中年男性ホームレスによるタッグ。
「青春」から離れ、主人公の悲惨なトラウマも絡み、またメインの事件は現実の著名な事件を参考にしたともおぼしい凄惨さで、全体的にハードでビターなテイスト。ホームレスの描写なんかも、よくあるヒューマニズム強調の生ぬるさからは離れ、時に冷徹でもあったりで好感が持てるし、一方でキャラクタの愛らしさや五感に訴える文章、それらを包含したリーダビリティはしっかり担保されていてこちらもさすが。
真犯人の造形はその特定の演出ほどにはショッキングではないけど、「ベランダの物置」というなんてことないアイテムを被害者の心理状況と絡めて展開されるロジックに説得力があり、面白く感じた。
評価はB。

枯葉色グッドバイ (文春文庫)

枯葉色グッドバイ (文春文庫)