麻耶雄嵩『さよなら神様』文藝春秋

ネタバレ注意。
まさかの続編「神様」シリーズ。当然のように貫禄の本ミス一位。
前作は非常にショッキングに読んだ記憶がありますが、その美化された記憶と青天井の前評判があいまって、ちょっと事前の期待が高すぎたような…。
「本格」としての形式破壊とか、いまだによく分かってない「後期クィーン問題」とか、本格ミステリとしてのラディカリズムは麻耶雄嵩という作家について回るものだし、その挑戦心や挑発性が大きな魅力だとは理解しているけど、個人的にそれが飲み込める作品とそうでない作品があって、この本は若干後者に傾いていた。『夏冬』や『鴉』といった長編の衝撃を引くまでもなく、前作や『貴族探偵』あたりのシリーズほどにも衝撃や吸引力を感じられなかった。
踏み段であることを隠そうともしていない序盤の数作は評価に入れないとしても、後半のラディカルな作品、どうしても「やりすぎ」のように感じてしまう自分は本格読みとしてヌルすぎるのでしょうか。むしろ西澤SFミステリ的な特殊状況本格として愉しんでしまえばいいのでしょうか。
いずれにせよ、こうして本格ミステリという構造に波紋を投げかけ、それを読む本格者の自己同一性にまで波及させるその「踏絵」作家ぶりは、昔も今も唯一無二であり続けています。
かっこいいよね。
評価はB。

さよなら神様

さよなら神様