amazarashi 『爆弾の作り方』

1stEP。
アーティストとしての総評的な部分はこれまでのレヴューで書いてきたので、以下それぞれの音盤の気に留まった楽曲について。

1.「夏を待っていました」

もしも今日があの日の続きなら 僕らの冒険を続けなくちゃ

『スタンド・バイ・ミー』インスパイアのジュブナイル・ロック。詞のテーマ性が胸を打つけど、サウンドも楽曲の世界観を見事に表現して、このEPのキラーチューンになっている。夏休みソングとしては陰鬱に過ぎるけど、「あの時の僕ら」に対する視線の優しさが、なんだか哀しくもあたたかい、不思議な気持ちにさせてくれます。

2.「無題」

変わってくのは いつも風景

売れない画描きを主人公にした寓話調のバラード。表現者としての業と信念、それを支える思いのせつなさ。正統的ではあるけどそれゆえの力がある物語と楽曲、そしてそれを空疎なベタさに堕すことのない表現力(とおそらくアーティストとしてのたたずまい)のシリアスさに、amazarashiの本領を聴けます。
他では似てるとは全然思わないけど、この曲に関しては「ベストピクチャー」と「リリィ」を足して割らなかったような曲だなあと懐かしい『THE LIVING DEAD』を思い出す。

3.「爆弾の作り方」
タイトルチューンは自分語りの犯行声明×宣戦布告。「イノセンス」「アイデンティティー」「イデオロギー」と、中二感満載の単語が惜しげもなくサビで歌い上げられるので、なんだかムズ痒くなってしまうけど、この感性が何よりイノセントだよなあと嬉しさと信頼感を同時に感じる。「イデオロギー」のとこライヴで皆で叫びたいと思うけど絶対やらないな。

5.「隅田川

あなたがくれたその全てに ありがとうって聞こえますか

ひたすらにセンチメンタルでロマンティックで、美しいバラード。
すべての出会いと別れに普遍的な、あたたかさとせつなさを描いて、その豊かな叙情に落涙必至。

爆弾の作り方

爆弾の作り方