大倉崇裕『七度狐』創元推理文庫

ネタバレ注意。
大昔に読んだ『三人目の幽霊』に続くシリーズ二作目、初長編。シリーズ名はなんぞやな。「牧編集長と私」ではなかろう。
ううむ、惜しい、という感じではある。シリーズなので当然落語ミステリであり、クローズド・サークルかつ村ミステリ*1でもあり、キャラにも事件にもドラマにも、いろいろとアイデアを盛り込んでいる。
充分に野心的な作品だと思うが、どうも巧く回ってない感じがする。少なくとも小説としては、やたら分量の多い会話文や、ちょっとオーバーデザイン気味のキャラクタ造形含め、どこかぎこちなく感じる。「噺」を扱うシリーズとしてあまりシリアスになりきれないのは分かるが、そうしたシリーズとしてのテンションと、ドラマの主題、そこで扱われる「業」の種類が、あまり相性のよくないものであったのかなあ、と。それをねじ伏せられなかったのは、やはり力量だとは思うのだが。
もっとシリアスに、シックな雰囲気でいった方がいいものにはなっただろうな。でもあからさまに一番怪しい奴が、そのまま犯人だな…。
評価はC。

七度狐 (創元推理文庫)

七度狐 (創元推理文庫)

*1:つまり「嵐の山村」。