W.ゴールディング/平井正穂(訳)『蠅の王』新潮文庫

ネタバレ注意。
ノーベル賞作家の代表作、暗黒版『二年間の休暇』。
バトロワにハマって、空気感の似た作品ということで『死のロングウォーク』なんかと一緒に買ってたのでした。その時は読み難くて投げたんだけど、さすがに経験値も上がって、今回はさらりと読むことができました。あまりこなれた訳とは思えませんでしたが…。
キャラクタも、ドラマも、また事物の描写も、繊細でありつつ迫力があって、とても「濃い」小説であると思います。でも厭な濃さじゃない、その辺がセンス。特にタイトルがかっこよくて、疑似宗教のようなものが少年たちの間に起こり、その「神体」に対する「供物」として、獲物である豚の生首があり、黒ずんで蛆と蠅にまみれたそれをさして「蠅の王」って、なんともすぐれてダークな象徴物です。
顔を隈取りすることで、凶暴性、あるいは獣性が解放される、ってアイデアは、これ以前に文化人類学的な知見があるんだよね? オリジナルだったら凄いけど、でもとりあえず『ドラゴンヘッド』は、この小説に拠ってそうな気がする。
評価はB−。

蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)