大槻ケンヂ『オーケンのめくるめく脱力旅の世界』新潮文庫

ネタバレ特になし。
いつもの「脱力」エッセィ集。
精神的な危機状況に関しては、ややコンディション上がりつつあるのかしら、という感じ。その意味で「心療内科へ行って禁UFOを解いてもらおう」の回は、これを客観的にシュールな情景として書けたという事実もあいまって、なんか安心して笑えました。
一方「スイカちゃんと熱海でお別れ」とか「友達にお線香をあげに行こう――追悼・池田貴族」なんかのセンチメント全開は、なんかちょっと違和感あった。なんかもっとどうでもいい話に、仄かに香らせるのがオーケンのセンチメント作法ではないのかと。俺はそういうのが好きなのだと。
なので前述の「心療内科〜」とか、「宵々山でダメだこりゃ!」の回の実録性といったフラットな部分が愉しく読めた。後者にはミュージシャンとしての充実感や達成感も滲んでいて、「脱力旅」とはいいながらも隠せないそれらがまた好ましい。
評価はC+。