田口久美子『書店風雲録』ちくま文庫

ネタバレ特になし。
「池袋リブロ」の回顧録
職業意識と、「プライベートで仕事思い出す本読みたくない」という思いの狭間で積読にしておりましたが、いざ読みだしてみれば、存外楽しく読めてしまいました。
描かれる「時代」が自分にとっては遠いので、客観的に見れたこともひとつですが、筆者の生き生きとした筆ももちろんあると思います。本文中に何人も登場されますが、この業界にあって、自分の仕事を生き生きと語れる人が、基本的に好きです、僕は。筆者自身も、本筋をやや離れて、本を挙げ出して止まらなくなってしまうあたり、共感が大きく好ましかったです。
個人的にはまた、史料的な価値も高い本でした。地方小の勃興期の証言なんかもそうだけど、まずは最後の章、「バーゲンブック」について。今はこっちが営業かけてる立場だけど、黎明期にはこれだけの軋轢と、苦労があったんだなあ、と。なんかいろいろすいません。目次見て、「トリにもってくるほどの話か?」とか思ったことを深く反省いたします。併せて述べられる、「再販」に関する「理由」にも、それは取次の人間として考えが甘いと言われるかもしれませんが、ただ一人の読書人として、深く共感するものがありました。僕も、そう思います。
筆者には以前採用の面接をしてもらったことがあって(採用してもらえませんでしたがw)、そういえば就職してからも営業担当に連れられて挨拶させてもらったことがありました。まだ若干太刀打ちできなさそうですが、より経験を積んで、お話ができるチャンスがあればなあと思います。
評価はB。

書店風雲録 (ちくま文庫)

書店風雲録 (ちくま文庫)