保阪正康『死なう団事件 軍国主義下のカルト教団』角川文庫

ネタバレ一応注意。
昭和12年、国会や宮城広場での同時「自決」騒動、その挫折後の教主への殉死事件を起こした、日蓮会殉教衆青年党…「死なう団」の実像に迫る歴史ドキュメント。
もっとこう、端的には血盟団みたいに、社会改革に自覚的な集団なのかと思ってたけど、読んだら単純に可哀想な人たちだった。今も昔も変わらぬ上に、軍国主義体制によりさらに拍車のかかった神奈川県警のクソっぷりに踏み躙られ、宗教の理想に殉じるために、先の見えない社会・政治運動に傾斜せざるを得なかった、社会的弱者としての宗徒たちの姿、その悲哀に、胸が詰まる思いがします。
この団体においては、盟主・江川桜堂が、井上日召のような野心もなく、出口王仁三郎のようなスケール感も望めない、真面目で潔癖な宗教者だったってことが結果的な敗因だったように思う。宗教に殉じようとするに足る、脆さに通じる繊細さを惹きつけるタイプのそれだったと。
ノンフィクションとして、事件の詳述と総括以外に、生き残った団員のその後の証言の部分にも大きな価値が認められる本です。あとがきに紹介されている、「あの事件を再現したい」という元団員の老人の述懐にも寒気をおぼえるけど、中心人物だった長滝氏が、信仰に敗れてやがて浪江町に移ったって話は完全にクるものがあります。信じた教えを滅ぼされ、切り拓いた山林をまた殺されてしまったという思いはいかばかりか。
純粋すぎる人々が追い詰められ、自壊していく、閉塞の痛切な記録。筆者の言にあるように、そうした純粋さが、他者の破壊にではなく、自らの内内に向かったことを、少なくとも信仰というものの「救い」としたいものだとは思います。
評価はB−。