ネタバレ特になし。
図版・写真と豊富な資料を交えた事件の記述、および事件の最中・以後の容疑者、その列伝を新説・奇説含めて紹介した本。以前なんかのミステリ小説読んだことあったけど、この人本来は「リッパロロジィ」がメインなのね。
資料が豊富つったけど、損壊の限りを尽くされた死体写真とかが普通に載っててグロい。でも現場写真なんかも含め、そうした貴重な資料によって描出される、「その時代」、「その場所」の雰囲気にはかなりの迫真性がある。ヴィクトリア朝末期、ロンドン、イーストエンド。その底辺的な「場末」感。
「ヴィクトリア朝」なんて言うからさ、華美に退廃的な雰囲気を想像してたのです。着飾った高級娼婦の立ち並ぶ、ある種「花街」的な。でも実際なにここ、完全な貧民窟じゃん。被害者も一人除いて中年以上の年齢のおば(あ)さんだし、職業娼婦というよりは、貧民のおば(あ)さんが生活に困って春をひさいでいたという話。島田荘司『切り裂きジャック、百年の孤独』や服部まゆみ『一八八八、切り裂きジャック』なんかでフィクションには親しんでいたはずなんだけど、その勝手なイメージは覆されました。
後半の容疑者列伝も、マッドな人たちばかりで面白かったのですが、まあそれも含めて、切り裂きジャック云々以前に、歴史風俗のノンフィクションとして面白かったです。
評価はB。
- 作者: 仁賀克雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/08
- メディア: 文庫
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