『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

DVD。
いろいろ資料を漁っている連合赤軍であります。避けて通れないと思っていた若松孝二の三時間の大作。
日米安保を起点にした日本の左翼運動史を概観しながら、連合赤軍の結成から山岳ベース事件とあさま山荘を中心に、やがてその瓦解までを「実録」…登場人物も基本的に実名、前知識と照らしても大部分がノンフィクション…として描く作品。
俳優陣の演技も、それを含めた画面にも迫力の感じられる作品ではありますが、ノンフィクションなんかも結構読んできた身で個人的には、「実録」をなぞることに寄りすぎて、登場人物の内面とか、集団の狂気の力学を掘り下げて、「映画」の表現として十分なインパクトを持って提示することはできていないように感じました。一番インパクトのあるシーンは遠山美枝子役坂井真紀の、「総括」から死に至るシーンですが、それはこの映画の必然というよりどこかホラー的なギミックとして感じられたりもして。だからクライマックスで加藤三男が叫ぶ、おそらくこの映画における主題、メッセージとなるべき「象徴的」な台詞も、「象徴的」な演出として浮き上がって感じられました。
永田洋子もなんかネチネチと女の嫉妬をチラつかせるようなキャラだし、森恒夫ルサンチマンやコンプレックスをそれほど発露させず、ラストに至ってはキメ顔のアップに「初めての革命的試練―跳躍のための」とかって自殺するだけなのに無駄にかっこつけた遺書のテロップが重なるという演出、下げの演出ではない気がする…。僕のこの二人に対する人物理解もかなりのステレオタイプだと思いますが、でもこれを深めてくれるものが提示されなかったのはちょっと寂しかった。
キャストに関しては前述坂井真紀はいい仕事してたと思うけど、ARATAはちょっとかっこよすぎたな。ストールがおしゃれスタイリングにしか見えなかった。坂口弘という人の微妙な立場はもっと深く描いてほしかったけど、なんか一人だけ浮いてかっこいい人が流されながら右往左往してた。あと重信房子役伴杏理は雰囲気出てたけど、棒読みの度が過ぎて…。まあ実年齢に抗って、同世代の親友として横に張ってた坂井真紀の、ここでもの頑張りを引き立ててもいましたが。

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]

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