ネタバレ一応注意。
先輩に貸していただきましたありがとうございます。
芥川賞候補*1。『ディスコ探偵水曜日』に続くドロップで、あの歪な大作の次に一体どんなんもってくるんだろうと思ってたから、これがまた意外とおとなしく、普通に感動的な佳品だったので逆にびっくりしました。
SF的・ミステリ的な展開があるわけでもなく、ただ主人公の女の子が、家族(基本だね)とか愛とか生と死とか、「物語」だとか自己と他者だとか、そういう文学的な主題について考え、語り続けるだけの話。
いつも通りの舞城節は一見乱脈ではあるのだけど、でも根底にある思想はとても真っ当で、それはいっそ「モラリスティック」って単語が似合うほどです。こういう思想を衒いなく、明快に示してくれる作家ってのは他に思いつかない。語り口より何より、そういう姿勢がかっこいいと思います、僕は。
いろんないいセンテンスがあるので引用はしませんが、終盤の流れ、最後の晩餐でのオヤジの挨拶に笑い、普通にいいシーンが連続して、でもその後すぐ出し惜しみしてた大活字で《キモッ!》(188)とかやってたのが鮮やかですごく気持ちよかった。見事でした。
評価はB。
- 作者: 舞城王太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/11/27
- メディア: 単行本
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*1:結果受賞作なし。結局獲れない気がする…。