渡辺ペコ『東京膜』集英社クイーンズコミックス

後輩が貸してくれたマンガ。
「これ絶対好きですよ」つってマンガ貸してもらうことはよくあるのだけど、確かにハズしたことがない。僕はそんなに分かりやすいでしょうか。
で、確かに好きでした。
独特の描線のブレ、あたたかみのある絵柄がまず好み。羽海野チカにしても谷川史子にしても、ガーリィなマンガはこうでなくっちゃあ。
ストーリィも素晴らしいのです。連作を含む短編集ですが、姉弟ドラマ「かぶと山トレッキング」だけはニュアンス違うけど、多くは東京に暮らす女性の孤独がテーマになっていて、一種の防壁として諦観と共に薄く張られていたその「膜」が、時に一点突破、時にじわじわと、破られ、浸食されていく様が描かれています。センスフルであると同時にハートフルで、心地いい感動。
酒飲み女子の恋愛譚「適正距離」、失恋女子の一夜の回復譚「9時から5時までのチャコ」が特にお気に入りでした。それぞれの主人公、それぞれの見せ場で、それぞれ素晴らしい表情とモノローグで魅せてくれます。

べつにね
恋愛体質でもないし
勝ちとか負けとかモテとか
そういうのすごくどうでもいい
だけど今日
例えば 東の空彼方に光る夏の大三角形
駅から家まで600mの帰路
15m前方を横切る猫
30cmとなりの 君の上腕二頭筋
ああちきしょうなんだよ
すっごくいいじゃんか こういうの
(「適正距離」、69-70p)

この後のダイアローグも最高だね。
でもベストキャラは、「リビングルーム」の戸田さん。ステキすぎるわ。

東京膜 (クイーンズコミックス)

東京膜 (クイーンズコミックス)