稲見一良『ダブルオー・バック』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
一挺のショットガンの流転の中に、四つの物語を紡ぐ連作短編集。
オープン・シーズン」は狩猟を媒介に男女の出逢いと別離を描く小品、「斧」は少年と父親の本格山岳ハンティング小説、「アーリィタイムス・ドリームズ」は借金抱えたバーの店主の素人探偵譚、「銃執るものの掟」は老ハンターが山中で逃亡工作員と邂逅するサスペンス。
どの話も練り込まれた文章とロマンティシズムで読ませるが、個人的にはひとつだけ毛色の異なる「アーリィタイムス・ドリームズ」がお気に入りだった。どっかアメリカンでほのぼのしてて、キュートで粋ないい小説だった。悪役完全自滅展開にはスカッとしたし、ラストもニヤニヤしたりして。まあどっかコメディ・パロディライクな作品で、本領ではないとは思うのだけどね。
評価はB。

ダブルオー・バック (新潮文庫)

ダブルオー・バック (新潮文庫)