"RISING SUN ROCK FESTIVAL 2007 in EZO" (#3)

二日目〜三日目。完結編。
久々のスタンディングゾーンへ。
8. BUMP OF CHICKEN (23:30-@サンステージ)
個人的には夜になってテンションは上昇の一途。
RIJ2003以来二度目のバンプ。常にフェスでしかこのバンドを観ていないのは、単にチケットが取れないだけなのだけど、前線から聞こえる黄色い歓声は、ワンマンに行くことができない自分をそれなりに慰めてくれるものだった。ハコだったら正直、いたたまれないだろうと思う。
「supernova」はまた別としても、僕は最近のバンプの曲に一抹の物足りなさを感じていて、それらが中心となったこの日のセットもまた残念ながら同じ印象ではあった。「ガラスのブルース」がファンサービスに聞こえた。シンガロングしたけど。
星が見えてたら「天体観測」がたまらんかっただろうけどね。まあ無理。
セットリスト:1.乗車権 2.涙のふるさと 3.真っ赤な空を見ただろうか 4.プラネタリウム 5.ギルド 6.天体観測 7.ガラスのブルース 8.supernova
その後アーステントに移動。目的は世界一かっこいい大きいお兄さんを観るため…
9. the band apart (00:40-@アーステント)
フェスのステージはあまり似合うバンドではないなw。原さんのMCもいつもより控えめな感じだった。
深夜にテントに集ったオーディエンスへの信頼故か、新曲も含めた結構レアなセットだったと思うのだけど、演奏はなんたって鉄板だし、フロアはアガりまくりだった。フェスのセットってベスト的選曲で攻めてくるバンドも多いけど、なによりパフォーマンスで魅せられるバンドの基礎体力を感じました。
川崎さんのヘッドバンギングも途中からおかしな角度になってたし、バンドもノっていたのだろう。なんだかやたら早く終わった気がした。
セットリスト:1.Stanley 2.coral reef 3.新曲 4.SOMETIMES 5.Circles and Lines 6.新曲 7.Stereo 8.higher 9.the noises 10.beautiful vanity
10曲演ってたんやな。
…そして。
泣く泣く捨てたACIDMANをひと目でも、と思ってテントを出ると、まさにその瞬間、あのオープニングのギターフレーズが満天に放たれていた。残響が、闇に美しく尾を引く。
…「ある証明」!!
その場でいきなりテンションが沸点に達し、唄いながらサンステージに走った。人には見せられない姿に暗闇は優しい。
ACIDMANというバンドだけではなく、日本ロック史上屈指のロック・アンセム。ロックの「勇壮」をそのまま純化して取り出したような旋律と、(他の曲ではややイタい)バンド独自の宇宙的なスケール感が、奇跡的に融合した一曲。
楽曲のレベルでは、この場で最も聴きたいものの一つだった。フェスティバルのメインステージで放たれるのに、完璧な充実を備えた曲であり、アクトだった。
…偶然のタイミングに深く感謝したのだけど、ACIDMANじたいはラストの「廻る、巡る、その核へ」でなんだかセンスのよくないPV的な映像をスクリーンに流したり、オオキのMCもなんだかアレだったりと相変わらずだったので苦笑いだった。
…そしてここから二組は、それこそ親を質に入れてでも観たかったアーティスト。
そのまま最前列に特攻。…とはいえ深い時間、サンステージのアーティストのなかで最もコアな人選ということでステージ前モッシュピットの人の入りは緩かった。普通ならいたたまれなくなるところだが、もう自分のなかで昂まる期待感でそれどころじゃなかった。ワンフレーズで、アウェイ感など瞬く間に塗り替えるだろう。
…そしてそういう音楽だった。まさにここ、札幌代表の鳴らす音楽は。
10. THA BLUE HERB (2:10-@サンステージ)
凍えるほどの冴えた空気。照明で蒼く染められた暗闇のなかで、張り詰めた緊張感のあるアクトだった。以前ハコで観た時よりも、アドリブやMCが純粋に楽曲に奉仕していた。オーディエンスとのコミュニケーションというよりは、楽曲の本質をいかに伝え得るか、という点にBOSSの意識は集中しているように見えた。演出効果、流れの点で、練りに練られたアクトだったのだろうし、それがなによりオーディエンスを興奮させると、彼は当然知っていただろう。
「STOICIZM」「AMENIMOMAKEZ」といった定番の完成度、「TENDERLY」「BROTHER」に宿ったメッセージの感動。一時間弱のライヴの最中、僕はずっと震え続けていたけれど(寒さの所為ぢゃねーよ)、圧巻だったのはなにより、2000年のフジロックで伝説を作った曲、僕がこのフェスティバルで断トツで最も聴きたかった曲だった。

例えばな 1日で1cmずつ進む 5日で5 1年で365
キャリアは5年で18m25もの スコアを叩き出すことができるっていう寸法だ

BOSSがそうライミングを始めた瞬間の、モッシュピットに共有された怖ろしいまでの興奮はきっと、死ぬまで忘れないだろうと思う。
「ILL-BEATNIK」もまた、張り詰めた緊張感のなかにあった。今も「流出」しているフジロック2000、炎天下のホワイトステージでのアクトよりは、アドリブも少なく、楽曲の原型に忠実な。*1

先は長い 深い コトバにならないくらい
先は長い 深い コトバにならないくらい

徒にコトバを重ねるのではなく、重ねてきたキャリアの集大成としての、純粋でシンプルなコトバと音を、集ったオーディエンスに伝えること。それがこの北海道の地で生まれ、育ち、そしてこれからも続いていく音楽の場を祝福するための、札幌代表の方法論だったのだろう。
「BROTHER」を語りかけるように唄い、明けの予感の見えない夜空に「この夜だけは」を力強く鳴らして、ライヴは終わった。
BOSSはそうして初めて、楽曲のためではない、オーディエンスのための、そして自分のためのMCを挟んだ。結局伝えたいのはひとつの言葉だけだと言って「ありがとうございました」と深々と頭を下げ、そして「やったぞ!!」と笑顔で拳を突き上げた。
まだ辺りは夜明け前の色濃い闇の中。その姿はこのメインステージに立ったどのアーティストよりも輝いて見えた。
セットリスト:1.RUN 2 YOU 2.PHASE3 3.C2C4 4.ILL-BEATNIK 5.STOICIZM 6.AMENIMOMAKEZ 7.TENDERLY 8.MAINLINE 9.BROTHER 10.この夜だけは
11.Cocco (3:30-@サンステージ)
機材トラブルか時間が押して、実際の開演は4時近かったと思う。空はうっすらと白み始めていた。
白いドレスを揺らめかせて、ステージ上のCoccoは実に楽しそうだった。身体の動きに、微笑ましいMCに、そしてなによりどこまでも伸びやかな歌声に、幸福感が溢れていた。レジャーシートゾーンに蹲っていた多くの人影が、空を赤く染め上げるような歌声に、続々と身を起こし始める。
「カウントダウン」や「音速パンチ」といったハードな楽曲も、情念というよりは生き生きとした躍動感を感じさせた。「強く儚い者たち」「樹海の糸」といった定番、「ジュゴンの見える丘」「Never ending journey」といった最新の楽曲、どれもまったく精度の変わらない表現で、Coccoはこれ以上なく感動的な夜明けの情景を描き出した。特に「ジュゴン〜」から「Never〜」の、ノビとスケールで涙腺を薙ぎ倒すCocco黄金律の連打ときたら!
これまでの彼女のライヴがどんなものだったのかは知らない。しかし僕が10年聴いてきて初めて観たCoccoは、なにより音楽の「幸福」の具現者だった。
セットリスト:1.燦 2.甘い香り 3.強く儚い者たち 4.樹海の糸 5.カウントダウン 6.音速パンチ 7.タイムボッカーン! 8.ジュゴンの見える丘 9.Never ending journy
ブルーハーブCocco。ここの流れは事前からハイライトだと感じていたものだったが、双方まったく期待を裏切らない素晴らしい音楽体験だった。この二組のためだけにでも北海道に来た甲斐があったというもの。
…その後はバイン@アーステントを諸事情により数曲だけ観て撤収。途中鹿野淳氏と擦れ違ったり、遠くサンステージから流れ聞こえるサニーデイ時代の楽曲*2に心惹かれたりしつつも、疲労の極地で満足にアガらず、バスにて爆睡。気づいたら空港に着いてました。
いやね、総括というにはあまりにもバカバカしい結論だけど、フェス、いーわ。次はいつだか分からんけどできるだけやる気を出したいところ。運営の話はめんどいから書かないことにしよ。

*1:そもそもこの曲の「原型」はライヴ仕様のバージョンにあると思う。

*2:その時は「青春狂走曲」だったけど、聞いたら「恋に落ちたら」演ったらしいやないか! 一番好きだっつの。