ネタバレ注意。
「ガーリー」という観念の結晶体のような表紙がまず最高だったんだけど。
小さな天蓋の付いた石造りの音楽堂は、静かな川のほとりにあって、小さな森の中にひっそりと埋もれているところが好きだった。私はあの音楽堂を見ると、草むらの中に転がっている、蓋が開いたままのオルゴールを連想した。
(14p)
なんつってハナっから力入った描写全開。クレバーかつノーブルな少年少女が、過去の秘密を駆け引きしながら、川辺の家で過ごすひと夏の合宿生活。…その「心地よく秘密めいた」感覚はまさに恩田の真骨頂ではあるが、小説のバランスとしてはやや過剰であったかもしれない。
過去の事件の極めて「本格的」なトリックなど、そこまで「ちゃんとする」必要があったのかやや疑問だった。この小説に限っては、この雰囲気だけで押し切った方がいいものになった気がする。作者みずから思い入れを述べている「少女たち」の描写に対しての、小説家としてのバランス感覚の故だろうと思うのだが。
まあでも、本領を発揮させるとやはり強い作家である。『ヘビイチゴ・サナトリウム』とカブる部分が多くて失敗したと思ったが、満足度はこちらが断然上。
評価はB。
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/06/25
- メディア: 文庫
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