高木彬光『刺青殺人事件』ハルキ文庫

ネタバレ注意。
あけましておめでとうございます。という年頭のごあいさつを、「ネタバレ注意」の後に持ってくる不作法。今年も相変わらずの更新かと思いますがお付き合いくださいませ。
で、初読の巨匠。解説ではリーダビリティのなさが云われていますが、俺はなかなか読ませる作品だと思いましたね。場末のバーでの淫靡なやり取りとか、刺青の「競艶会」とか、イカガワシイ舞台設定が、戦後の混沌とも相俟って独特の力場を形成。乱歩が激賞した作品ですが、やや硬質ながらも確かに乱歩的な世界。
本格としても、密室のホワイダニットがアリバイと絡んでて面白かった。『バイバイ・エンジェル』の密室×切断死体バージョン。だけどキモになるべき「刺青」の取り込みが、もっと凝って欲しかったってのが正直なところ。
有名探偵・神津恭介氏に関しては、あまり魅力を感じませんでした。ファイロ・ヴァンス丸出しの心理分析も、モノマネの域を出るものではありませんね。
作品の評価はB−。

刺青殺人事件 (ハルキ文庫)

刺青殺人事件 (ハルキ文庫)