浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』角川文庫

ネタバレ注意。

あるIT企業の採用面接で起こる「事件」を描く、シューカツ・ミステリ長編。

 それにしても、就活って今考えてみても、本当にキモかったよね。え? 思わない? 私、死ぬほど不愉快だったな……。何って、就活の全部が。
(127p)

(延髄千切れるほど首肯)。

…個人的思いはともかく、評判に違わぬ傑作でした。コレでもかというどんでん返しの連打と、それに伴う伏線回収の妙も偏執的で素晴らしいが、その過程での人物描写やストーリィの運びに不自然さや人工性がなく、常にクレバーで抑制が効いているのに好感。少しでも無理が出ていたり、ウソっぽかったりすると一気に醒めてしまうので、ギリギリのところを巧く渡っていると思う。

本当、シューカツなんて二度と思い出したくもないし、ここに出てくるような意識の高い青年たちにも大きな距離を感じるやさぐれ中年リーマンでも、エンタメとして充分以上に愉しめる作品でした。

評価はB+。