北山猛邦『オルゴーリェンヌ』創元推理文庫

ネタバレ一応注意。

会場の都市廃墟、「海墟」の島に建つ、オルゴール職人たちの住まう館…「カリヨン館」で起こる殺人事件を描く、少年検閲官シリーズの第二長編。

長さも内容も、非常に気合の入った設えで、作者の最高傑作に推されるのも頷ける大作。実際、悲恋譚を絡めたディストピア・ファンタジィとしての展開はなかなか読ませるものであったし、エノ、クリス、ユユのキャラクタたちもキャッチィで愛らしい。

しかし個人的に残念だったのは、終盤、物理トリックに主眼が置かれ始めると、やはり一気に興醒めしてしまう点だった。海墟全体図を見た時は、一体どんな破格の…島荘ばりの…トリックが展開されるかと期待したのだけど。

「物理の北山」のスケールはこの作品からは感じられず、その後の意外な犯人に至ってもテンションが上がらなかった。

評価はC。