池井戸潤『BT'63』講談社文庫

ネタバレ注意。
心身病んで退職、妻とも離婚して逼塞中の主人公が、ある不思議な現象により、父の過去と自らの現在に向き合うことになる、ファンタジックなミステリ。
経済小説、つか銀行しか書けないわけじゃねーぞ、って気合入れて書いたのが伝わるエンタメ大作だけど、残念ながら空回り気味。ロマンス・悲恋の部分があまりにベタだし、隻脚僧形白装束の怪人なんて活劇じみた要素も浮いてるし、現代パートも必然性が伝わらないし、キィアイテムのトラックも主人公の思い入れほどには存在感出てないし、タイムトリップ要素も、どうせならタイムパラドックスとか含めてもっと巧緻な造りにしてほしかった。
「オレンジ便」立ち上げのあたりとか、ビジネス小説の要素が入ってくると読み応えがあったので、やっぱそういう筆質の人なんだと思う。
評価はC。

BT’63(上) (講談社文庫)

BT’63(上) (講談社文庫)

BT’63(下) (講談社文庫)

BT’63(下) (講談社文庫)