打海文三『ロビンソンの家』中公文庫

ネタバレ注意。
主人公の高校生が、海辺に立つ「Rの家」で、様々にクセのある親戚たちと共同生活しながら、母親の「自殺」の謎に向き合う青春ミステリ。
青春ミステリとはいえ、例えば樋口有介作品のような爽快さ、微笑ましさはなく、登場人物たちが抱えた、それぞれに独特な…言ってしまえば歪んだ人生観と狂気、性的放埓が横溢した、あまりいい意味ではなく「文芸的」な作品。感情移入し難いし、ちょっとスカしすぎの感じがして、この作家には珍しくバランスを欠いた印象。まあ今まで読んだのも、思い返せば結構危ういバランスで成立してたような気もしてきたけれど。
雅彦伯父の上野のカフェテラスでのエピソードとか、「クズれたかっこよさ」みたいなものを阿漕に狙いすぎだし、一方で出てくる映画や文学作品が、俺レベルでも既知のものばっかりで、そう意味でもバランスが悪いと思う。どうせならもっとトガってほしかった。
あとは作中最大最悪のクズ野郎が、うちのクラブレジェンドと同姓同名ってのも印象悪かったなw
評価はC。

ロビンソンの家 (中公文庫)

ロビンソンの家 (中公文庫)