穂積『さよならソルシエ』(全2巻)小学館フラワーコミックスα

《画家と画商、兄と弟……ふたりのゴッホの絆と確執、そして宿命を鮮やかに描く伝奇ロマン》(裏表紙梗概)。
確かにおっしゃる通り、メインのプロットに沿って丁寧に造られた作品だけど、何かちょっと物足りない。
根幹にあるイマジネーションにも、それをストーリィに広げるダイナミズムにも、ロートレックなど実在の人物を配するギミックのセンスにも、すべて一定のものは認められるけど、そこから突き抜けられない小器用さの方を感じてしまう作品だった。
そもそも人類史上屈指の芸術家の画を前にして、人生のドラマを詐話するなんて「魔術」が本当に必要なんだろうか、というお話の根本にかかわる疑問を抱えてしまったし、それを拭い去ってくれるだけのドラマ、表現ではなかった。作中の絵画描写の説得力はまあしょうがないこととして、キャラクタも鋳型に嵌った感があって好きになれなかった。
カラーの方に魅力を感じる作画なので、作中絵画もカラーにしてみたらよかったんに…。

さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)

さよならソルシエ 1 (フラワーコミックスアルファ)

さよならソルシエ 2 (フラワーコミックスアルファ)

さよならソルシエ 2 (フラワーコミックスアルファ)