樋口有介『海泡』中公文庫

ネタバレ注意。
小笠原・父島に帰省した大学生の主人公が直面する、殺人と、死。
とにかく主人公、モテモテ。小中学生時代のマドンナや、民宿を切り盛りする幼馴染、東京から来てバーでバイトしているワケありの年上の女、画家である父親の下に住み込みで来ているモデル。とにかく出てくる女性という女性にモテまくり、ヤリまくる。夏の島で。そしてマドンナはやがて白血病で死ぬ。
それなんてエロゲだよ!ってツッコむのもバカバカしいぐらいのパーフェクト・シチュエーションだけど、そこはさすがの小説巧者・樋口有介、絶妙なセンチメントを混ぜて、楽しくて哀しい青春ミステリに仕上げています。特に翔子とのやり取りは、こんなベタな設定なのに、あるいはそれゆえに、涙なしでは読めないぜまったく…。あっけらかんとライトな村上春樹。褒め言葉になってるか分からんけど、この小説はそんな感じ。
何を読んでも、いい小説読んだなーという爽やかさが、じんわりと胸を浸してくる、そんな樋口小説の象徴のような作品でした。
評価はB+。

海泡 (中公文庫)

海泡 (中公文庫)