S.ミルハウザー/柴田元幸(訳)『バーナム博物館』白水社uブックス

ネタバレ注意。
奇想短編集…なんて言ってしまうと思考停止のようだけど、そうとしか言いようがなくって。
偏執的に濃密な描写と文体が形作る独特の世界観。この本を読む事前のモチベーションの大半であった柴田元幸の訳文も、他で見せる端整さでなく、この作家のパラノイアックなこだわりを確かに反映してあって、予想外に手こずる読書となりました。
ストーリィがどうとかより、ディテールの堆積とその稠密にこそ本質があり、それに翻弄されるべき小説なんだろうと思います。その意味では有名寓話のパロディが多かったり、「物語の物語」的な構成が多かったりするのも、作品をガクブチに入れてしまうことで、ディテールを全面的に立てるために選ばれた手法なんだろーかとも思ったり。
しかし『幻影師アイゼンハイム』、ありゃ映画はほとんどオリジナルだな。
評価はC。

バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)

バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)