C.デクスター/大庭忠男(訳)『オックスフォード運河の殺人』ハヤカワミステリ文庫

ネタバレ一応注意。
入院中のモースがある私家本を基に、19世紀のオックスフォード運河で起きた殺人事件を推理する歴史ミステリ。
推論の繰り返し、というデクスター・スタイルは、このテキストから過去の事件を掘り起こす、というプロットにより一層ラディカルなものに。制約が多い分、お話としてはシンプルになっていて、他の作品のように混乱することがなかったのはよかったかな。ロジックそのものは飛躍が多くて、カタルシスに充分なものはなかったけど…。
でもデクスターは、どっちかっていうと雰囲気を愉しむ感じになっている。大して長くない章の、その切り替わりの度に偏執的に置かれる「文学的」エピグラフも、俺は好きだよ。
評価はC+。

オックスフォード運河の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

オックスフォード運河の殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)