光原百合『最後の願い』光文社文庫

ネタバレ注意。
新興劇団のキャスト/スタッフ集めと、その周辺での「日常の謎」を絡めた連作。
題材も、連作としてのアイデアも、面白いものになりそうだって予感を惹起されるものなんだけど、各々のプロットの根幹も、それを肉付けする過程でのキャラクタの描出も、すべてが先走って「語りすぎ」。

普通の人間なら大人になる過程で当然獲得する幾つかのことを獲得しそこね、当然失うはずのたくさんのことを無くさないまま大人になったらしい彼の瞳は、驚くほど深く静かな光をたたえていた。
(229p)

とか、正直一番醒める類の描写が結構頻出する。あまりにも抑制が効いてなくて、鼻についてしまった。ちょっと題材に対する思い入れが強すぎたんだろうね。
『十八の夏』とかにはそういう印象なかったけどなあ。残念。
評価はC。

最後の願い (光文社文庫)

最後の願い (光文社文庫)