村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』文藝春秋

ネタバレ一応注意。
言わずと知れた新作長編であります。
「変化」とか、その「不可逆性」とかいったテーマは、『スプートニクの恋人』あたりを思わせもするんだけど、基調となっているのはむしろ濃厚な青春小説風味。『ノルウェイ』以前の、それこそ初期作品を思い出すような。
基本的にはケレン味の少ない、ノーブルな作品です。読むテンションは平熱をほんの少し遊離して、しかし常に浮き立つような心地よさでした。『1Q84』に比べて、インパクトとインテンシティ(使ってみた)において劣るのは否めませんが…しかし評価軸はそこではないだろうこともまた確かで。
今回のベスト・センテンスはオルガの描写。

裕福な農家に生まれ、そこで性格の良いおしゃべりな鵞鳥たちと一緒に育てられたという印象があった。
(252p)

比喩、卓抜すぎんだろw
文章の流麗はもはや、流麗すぎて逆に引っ掛かりをおぼえるレベルに達していますね。なんだコレどうなってんだって、常に。
評価はB。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年