梶尾真治『黄泉がえり』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
熊本県で局地的に起こる「黄泉がえり」現象を描くファンタジック・ヒューマン・ホラー。
黄泉がえり」現象に伴うドラマにおいて、人々の感情や行動、あるいは社会的な反応なんかは、非常に丁寧に描かれていると思う。特に行政的な動きはシミュレーション小説としての面白さがあった。
しかしそうしたこまやかさの一方で、物語全体のダイナミズムはだいぶおとなしくなってしまったような気がして。「黄泉がえり」の根本にある「彼」の存在とか、クライマックスのライヴシーンとか、大事なところが説明不足だったり拙速だったり、長編としてのバランスは整っているとは言い難いものでした。
評価はC。

黄泉がえり (新潮文庫)

黄泉がえり (新潮文庫)