ネタバレ特になし。
悪い意味でアブストラクト、茫洋として捉えどころのない小説だった。
作者本人もいまいちどうしていいか分からなかったんじゃないかと思われる。文章やキャラクタの作りに関して最低限基礎的なものは抑えられているが*1、練り込まれたものとはとても言えない。恋愛感情、近親憎悪といった作中のエモーションもそうだけど、単純に政治状況やそれに関連するプロットが幼稚すぎる。現実のそれが踏まえられているだけになおさら。批評性の段階に達していない。
持っているのはこれが最後、ところどころに稚拙さが露呈して好きになれない作家だったが、多分モロに影響を受けているだろう高村薫よりはかわいげがあった、という総括。
評価はC−。
- 作者: 五條瑛
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
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*1:しかしいつものことながら偉そうね。